Holicsワゴンは、瀬戸内地域で生きる人々をHolicsメンバーが訪れ、寝食を共にし、旅先の暮らしに溶け込みながらじっくりと本音で語り合うことを通じて、大切にしたいことを確認し合い、分かち合う企画です。
第4回となる今回は、ホリックスメンバーから南和希・千咲と一歳の息子が、広島県三次市甲奴(こうぬ)町を拠点に、NPO法人Peace Culture Village(ピースカルチャービレッジ、以下、PCV)という国際平和団体を運営するスティーブン・リーパー氏を訪れました。
スティーブ(私たちは、敬愛を込めてスティーブと呼んでいます!)は、アメリカ合衆国ジョージア州アトランタ出身。人生の約半分を日本ですごし、家庭カウンセラー、経営コンサルタント、翻訳家、平和活動家としてのキャリアを持っています。翻訳家としては世界中で数多くの被爆者証言の翻訳と編集をし、その通訳を行ってきました。2002年より平和市長会議ニューヨーク連絡員を経て、2007年から2013年まで広島平和記念資料館などの運営を行う公益財団法人広島平和文化センターで理事長を務めます。任期中には全米での原爆展も開催。2014年より甲奴町の古民家を拠点にPCVを設立しました。
平和活動家として世界中を飛び回り続けてきたスティーブ。自分たちの親よりもずっと年上で経歴や肩書も立派ですが、茶目っ気たっぷりでとっても親しみやすく、私たちを温かく迎え入れてくれ、2日間を通じて家族のような関係性になれました。それではさっそく、PCVのことを紹介しつつ、当日の様子をお伝えしたいと思います!
南「 PCVでは、どんなことをめざしているの?」
スティーブ
「PCVは平和の暮らし方を探求し、そのモデルとなることで、持続可能な社会づくりを目指しています。誰もが平和が良いとは言いますが、その平和とはどんなものなのか、どんな暮らしが良いのか、平和文化とは何かということについては余り議論がされません。
PCVは、社会的、政治的、宗教的、そして民族的に多様な価値観をもった個人やグループが、平和文化と言う言葉に具体的な意味付けをするための実験場となることをめざしています。肌で感じ、触れることのできる平和の暮らしのモデルを創り、未来に繋がる持続可能な価値観、知恵、技術を身につける場所をつくっていきたいと考えています。
いかにして人類は他人や自然と共生できるのか、そして本当の平和文化を築けるのか。この問いに対する答えを見つけることに貢献し、あらゆる人が平和的に暮らしていくための原則、心構えや技術を学ぶ場となることを大切にしています。」
南「PCVはどんな活動をしているの?」
スティーブ 「PCVはこれまで、ここ甲奴町にある古民家を拠点に、スタッフが住み込みで家と庭と農地の手入れをしながら、英語キャンプや農業体験、リノベーションワークショップやアテンドなどを通じて、年間延べ300人を超える人々を受け入れてきました。しかしながら現在は、資金難などを理由に、一部のプログラムの受け入れや今日のようなアテンドを除いて、一時的に農園の機能を停止させています。
今後は、甲奴町での活動再開を目指しつつ、広島平和記念公園でのガイドプログラムやオンラインスクールの開講など幅広く活動を展開していきたいと考えています。」
スティーブ「難しい話はこの辺にして、すこし歩きましょうか」
一緒にいるだけで癒されてしまうような不思議な雰囲気のスティーブに、僅かな時間でスすっかり懐いてしまった息子の葉月。貰った野花を握り締めて上機嫌。冒険の始まりです。
スティーブ「僕はこの谷を縄文時代みたいにしたいんです。」
スティーブ「自然農なのかパーマカルチャーなのかまだ分かりませんが、豊かな植生の中で自然と調和して生きていく縄文時代のような場所があったら、これからの時代のヒントになるし、世界中からたくさん人が見に来ると思うんです。そんな場所があれば、みんな見たいと思います」
聞きなれない「縄文時代」というフレーズに多少びっくりしつつも、話を聞くほどスティーブの世界観に引き込まれていきます。
僕の友人が実践している、「協生農法」という、植物のポテンシャルを最大限に引き出しながら、生態系自体を作り上げていく農法の話で大変盛り上がりました。こんな場所があったら最高だね、一緒に作りたいねとどんどん夢が膨らんでいきます。
メインの拠点を広島市内に移し本格的な再稼働の準備中ではありますが、スティーブが案内してくれた村の至るところに、美しくもたくましい自然の光景が広がっています。
生ゴミを土に還すコンポストの周りに、大量のトマトがなっていました。
聞けば種を撒いた訳ではなく、コンポストから自然と種が溢れて自生しているそうな。
農薬も除草剤も使っていないのでそのまま摘んで食しましたが、とっても濃厚で美味しかったです。
湧水が出ている場所を教えてもらったり、その辺に自生しているマコモダケというイネ科の植物の根元が食べられることを教えてもらったり、歩いていて話がつきることがありませんでした。マコモは抗酸化作用や解毒作用が強く、昔から神事や仏事に使われることも多いそうな。
「甲奴には、PCVのビジョンに共感した地域の方々から、管理を任されているお家が何軒かあります。これまでにも受け入れ実績がありますが、これらの家を改修してもっと多くの人を受け入れられるように準備中です」
夜はマコモダケの味噌汁を一緒に作って、ファームに自生していたトマトを頂きました。
スーパーで買い物をするわけでもなく、育てた野菜を食べるわけでもない。自然の中にあったものを、ちょっとだけ借りてきていただくような不思議な感覚に、身体が少し喜んでいるような気がしました。一緒にご飯を作って食べたり、土を触ったり、ヨガで身体をほぐしたり、お互いの人生について話したり。スティーブのいつもの生活に入れてもらうだけで、いつの間にかとっても癒されてパワーが漲っている自分に気がつきます。
スティーブ「それは良かったです!僕はこの村やこの村での生活にとても可能性を感じています!たくさんの人が見てみたくなる場所を南家と一緒に作りたいな。一緒にこの村に住みませんか?」
彼の周りにたくさんの若者が集まっている理由が最後に分かりました(笑)
PeaceCultureVillageがどんな場所に生まれ変わるのか、楽しみです!