突然ですが、旅の魅力ってなんでしょう? かのスティーブ・ジョブスも「旅の過程にこそ価値がある」と語っていますが、旅の目的は単にその場所へ行くことではなく、その土地に触れ、新しい気づきや出会いを得ること。旅は私たちに多様な視点で物事を見る術を教えてくれます。一方、受け入れる側だって旅人からたくさんの発見をもらいます。異なる視点で地域を見直すことが、住む人の誇りや自信を育み、土地の魅力を増幅させる。「そんな旅の好循環をどうつくるか」が今回のお題です。
○日 時 2017年2月4日(土)14:00〜16:00
○場 所 大崎上島観光案内所(大崎上島町東野6625-61)
○ゲスト
山尻シェアハウスChikara 松本幸市さん(大崎上島)
Round Table Conference 赤松慎一郎さん(徳島市)
しまなみ海道のサイクリングガイド&アウトドアライター 宗近朗さん(向島)
●ゲストトーク
旅する側、受け入れる側、両方の立場から新しい観光
「旅×移住」
1人目のゲスト、松本幸市さんは大崎上島(広島)生まれ。外洋航路の船乗りとして世界の海を旅した経験を持ち、現在は、生まれ育った山尻集落で古民家シェアハウス「Chikara」を営んでいます。人口50人の集落にあって、2年間でChikaraを訪れた人は198人。そのうち16人が島に移住しました。そんな島のウチとソトをつなぐ案内人である松本さんにとって、観光は島に住みたくなる入口づくりでもあると話します。
「旅×宝探し」
2人目のゲスト、徳島生まれの赤松慎一郎さんは、街全体を使ったリアル体験ゲームを全国で展開している「タカラッシュ」の元仕掛け人。全国で行ったことのない都道府県はないという言葉通り、日夜旅をしながら、遊びづくりを通して地域活性化のコンサルティングを行っています。赤松さん曰く、地域の情報には「地元の人だからわかること」と「ヨソ者だから見つけられること」があり、その両方が生かされるのが旅づくり。旅の仕掛けをつくることは地元発見のプロセスでもあるとか。
「旅×仕事」
3人目のゲストは、向島(広島)生まれでしまなみ海道のサイクルガイドをしている宗近朗さん。10歳から青春18切符で一人旅をはじめたという旅のツワモノ。「旅と教育」が人生のテーマで、アメリカの環境教育から学んだインタープリテーションの技術が今のガイドのベースになっています。それはguide=導くのではなく、educate=引き出すこと。そんな彼が聞かせてくれたのは、「wondering scalar(放浪教師)」という14世紀にイタリアで実在した人たちの話。旅をしながら働き、技を身につけていくスペシャリストです。例えば、日本の杜氏衆もそのひとつ。共通するのは能動的な旅のあり方。与えられるのでなく、その人が自ら発見し学ぶことこそが旅の醍醐味だと言います。
3者3様の白熱したプレゼンは、旅は一度限りの出会いではなく、その先延長線は暮らし=移住にまでつながっていることを示唆してくれます。素通りされない旅をつくるには、地元とヨソ者のかけ算が必要。与えられるだけでなく、旅人自らも与える側になれるような、そんな能動的な関わりのつくり方が鍵になるかもしれません。
●ディスカッション
後半のディスカッションでは、さらに「教育」をキーワードに議論を深めました。会場となった大崎上島の大崎海星高等学校では、島の若者の人口流出対策として、町との連携のもと「高校魅力化プロジェクト」を進めています。授業に地元を学ぶ「大崎上島学」の導入したり、地域おこし協力隊を講師に大崎海星高等学校のための公営塾「神峰学舎」との連携など、教育×地域の先進地域でもあるのです。
今回は「高校魅力化プロジェクト」に取り組む先生や生徒の皆さんも参加してくれ、こうした話し合いの場に大人だけでなく、学生も参加できる工夫があったらいいのでは?という声もでました。
●オプショナルツアー
第2回目から、ゲストとよりディープに交流したいという声に応えて、オプショナルツアーも実施。今回は、赤松さんのミニ「宝探しゲーム」を実際に体験しました。
当日はあいにくの雨でしたが、宝の地図を片手に、普通なら見過ごしてしまう港の古い石灯篭や神社を発見。地元の老舗ラーメン店やお菓子屋さんで島の人たちとも交流したり、いつもとは違う大崎上島を巡ることができました。
今回の出会いを機に、ゲストの赤松さんとホリックスも連携し、大崎上島をはじめ、瀬戸内でも本格的な宝探しゲームの実施しようと、新たな動きが始まりました。旅と教育、今後の展開に乞うご期待です。