観光を考える上で欠かせない「食」。それは瀬戸内エリアに暮らす人たちにとっても、お互いの地域の特徴や個性を知る上で、きっと魅力的な手がかりになるはず。ということで、記念すべき HolicsTalk第1回は「食」をテーマに開催。キーワードは「未利用資源」です。
●日時 2016年12月17日(土)15:30~17:30
●場所 くぐり門珈琲店(広島県東広島市西条本町17-1)
●ゲスト 小田水産 小田佳希さん(山口県周防大島)
瀬戸内焙煎珈琲倶楽部 上田健一郎さん(広島県呉市)
●ゲストトーク-01
「未利用資源をどういかす?〜持続可能な漁業の生き残り方」
1人目のゲスト、小田佳希さんは、山口県熊毛郡にある水産加工会社の6代目です。かつてはいりこの産地として賑わっていましたが、漁業関係者の高齢化等で、いりこの加工場が半減。危機感を抱いた小田さんは、特産品のハモに着目し、市場に出回らない規格外品の商品化に取り組みました。地元の2水産会社、1漁協、約30船の漁師と提携して規格外ハモを買取り、自ら販路開拓。最初は500Kgからはじめ、3年目には15tを売り切るまでに増やしました。
しかし「販売量を増やすのがゴールではない」と小田さんは言います。大事なのは自分たちの地域の持続可能な未来をどう描くか。なぜ漁業が衰退したのか、食べられるはずの魚が廃棄されなければならないのか。乱獲への反省と、関係者間の合意形成がなければ「同じ過ちを繰り返すだけ」と強調します。
そこで小田さんたちは、規格外ハモの商品化だけでなく、主要商品であるいりこの品質改良に着手。商品価値を高めて生き残る道を選択しました。プロの料理人やラーメンチェーン店などと連携し、これまでなかったいりこ出汁の評価基準を設け、現在、Sランクの日本一のいりこブランドづくりに取り組んでいます。
●ゲストトーク-02
瀬戸内の暮らしをコーヒーで表現〜「島ブレンド」の開発〜
2人目のゲスト、瀬戸内焙煎珈琲倶楽部の上田健一郎さん(広島県呉市)が着目したのはコーヒーです。
じつは日本は世界有数のコーヒー大国。輸入豆の種類は世界トップクラスなのだとか。ブレンドとなれば表現の可能性は無限大。地元の青年会議所で地域づくりに取り組んでいた上田さんは、「だったらコーヒーで自分の土地を表現することも可能では?」と閃いたと言います。
さっそく仲間を集めて、広島県の8島、1500人の島民にコーヒーのテイスティングを実施。島ごとの味の好みをブレンドで表し、商品化しました。
例えば、おばあちゃん率の高い島は、砂糖とミルクをたっぷり入れるので深煎りが好み。漁師の多い島は、日頃から活きのいい魚を食べているのですっきりキレのいい味が人気。コーヒーを飲めば、その島に暮らす人の顔が見える。そんなストーリーのある「島ブレンドコーヒー」は、現在、お土産品として各島のPRにも一役買っています。
何が観光資源になるかはアイデア次第。古いもの、ないがしろにされてきた価値を見直すことが大事だと上田さん。その視点で見れば、じつは人=住民だって未利用資源だったのかも?と気付かされます。
●ディスカッション
台湾マルシェに出店しようプロジェクト、発足?!
参加者も交えた後半のディスカッションでは、会場からもさまざまな意見やアイデアが飛び出しました。瀬戸内のこれからの観光を考えるとき、どう足元と向き合えばいいか。価値を見直して、つなぎ直し、新しいストーリー付けをする。ゲスト2人の事例は、参加者のイマジネーションをおおいに刺激しました。
会場から出たアイデアをヒントに、最後には「台湾マルシェに瀬戸内組で出店しようプロジェクト」が発足。今後は、春頃に現地リサーチツアーを敢行予定。小田さんや上田さんのように、自ら動き出すことで、未来のヒット商品が生まれるかもしれません。